[本]『起業のファイナンス ベンチャーにとって一番大切なこと』(磯崎哲也著)
「何度も読み返す必要がありそう」というのが正直な感想です。起業するにあたって、ファイナンスの面でどのようなことに気を配れば良いのかが、懇切丁寧に書かれています。が、正直良く理解できていない部分が多いです。
後半に「『経営の神様』ではなく、『クシャミもすればミスもする普通の人間』が成功できるのだとわかることが重要」とありましたが、そこを読んでいるときに、先日の藤田さんが思い浮かびました。彼はベンチャーで社会を変えているのかも、とふと思った次第です。
※メモ※
「起業する人に資本を供給する風土が存在しない」「まともなエンジェルがいない」
日本における投資に関する大きな誤解。成功者によるスタートアップへの投資はかなり行われてきている。自分でちゃんとビジネスの目利きができる投資家は、自分がどこに投資しているといったことを大声で言っても何の特にもならない。
商売で最も重要なもの
「信用」
『フリーエージェント社会の到来』
銀行からの借入をあてにしてはいけない
ベンチャー企業がイノベーティブなことをやる場合に、銀行からの借入をあてにしてしまってはいけません。それはリスクが高いからです。ベンチャー企業はお金を「借りる」べきではありません。収入が不安定な中で、毎月必ず元利を返済しなければならないというのは非常にキツい。1回でも元利の支払いができなければ、基本的には全額を即時返済しなければならない。
反社会的勢力・反市場的勢力に関する対策
基本的に、素性のよくわからない人を株主や取引先にしてはいけない。役員や従業員の採用も、非常に慎重に考えて行うべき。
ベンチャー企業を始める人にとって大切な心構え
会社を一度作ったら、それは公の器すなわち『公器』として考えなくてはならない。たとえ自分が株式の100%を持っていたとしても、それは『公』のものなのだ。
説明コスト
「合同会社」とか「有限責任事業組合」といったビジネスの入れ物を使う場合、「何ソレ?」と疑問を持たれた場合には説明に手間を要する。
資本金が大きくなれば、登録免許税も大きくなる
登録する資本金の額に対して0.7%で、1件につき設立時は15万円、増資時は3万円が最低金額。
ベンチャー企業においては「なるべく資本金を減らせないか」と考えましょう
少なければ少ないほどいいというわけでもない。登録費用などを払ったらそれだけで債務超過になる「資本金10円」「資本金1円」といった会社の設立はお勧めできない。最低でも30万円や50万円くらいの資本金にした方が良い。
エレベータ・ピッチ
エレベータの中で有名な投資家にビジネスを説明する幸運に巡り会えたとして、そのエレベータに乗っている数十秒の間に、「わたしはこんなビジネスを始めようと考えています!」と説明して、「それは面白そうだね!」と思ってもらえるようなプレゼンテーション。
センスだけでは経営は続かない
創業時に「社長」になる人は、「技術や営業だけわかっていればOK」ではなくて、ある程度、「経営」や「数字」もわかっていないと長続きしない可能性が高い。
「絶対成功する」事業計画が立てられるわけはないが、「明らかにダメ」な計画はわかる
計画段階で、前提が間違っていたりすでに成功の可能性が低そうな計画になっていたりしたら、成功する可能性は低いでしょうし、成功する可能性がまったくない計画なら問題外。
事業計画書の全体の構成
- EXECUTIVE SUMMARY
- 会社の概要
- 会社の資本金などの基本事項
- マネジメントチーム(経営陣)の概要(略歴、職歴、この事業に使えるノウハウなど)
- 組織(図)
- 現在の事業内容の概要
- 顧客
- その他
- 外部環境
- マーケットの概要
- 市場の規模
- 市場の構造(競争環境の現況と競争の要素、KFS)
- 数値計画(損益や資金などの計画)
- 事業の基本的な戦略
- 販売計画
- 人員計画
- ⇒損益計画
- 市場規模や顧客数、シェア、単価などの前提条件
- 売上
- 売上原価(コストや販売数量などから計算)
- 広告費・販売促進費(どういったプロモーションや営業活動を行うか)
- 人件費(どれくらいの給料の人を何人雇うか)
- 福利厚生費等
- 賃料(どんなオフィスや施設を借りるか、規模とともにどう借り増すか)
- 減価償却費(固定資産の投資から計算)
- その他経費
- 営業外費用や法人税等(借入れや法人税率等から計算)
- 貸借対照表項目(資産、負債、資本)
- キャッシュフロー(投資など)
- 検討している資金調達の概要や資本政策
- 「EXIT」をどうするか(上場を目指すのか、それともバイアウトするのか)
- 想定している企業価値の根拠
- 資金調達のスキーム
- 株主構成(資本政策表)
起業する社長に必須の知識
事業計画で検討する程度の会計の知識。
損益計画で押さえるべきポイント
- ターゲットとなる顧客が潜在的にどのくらいいるのか?
- そのうち、どのくらいが当事業の顧客になるのか?
- 顧客や商品当たりの単価はいくらくらいに設定するのか?
- 結果として売上がいくらになるのか?
- それに、どのくらい経費がかかるのか?
- 差引、どのくらいの利益が出るのか?
企業価値と羊羹の比喩
「企業(全体の)価値」という羊羹を何個に切り分けているのかで、1つ当たりの羊羹の大きさ(株価)が決まってくる。重要なのは羊羹全体の大きさ(企業価値)であって、切り分けられた一切れ一切れの羊羹の大きさではありません。だから「株価がいくらか?」だけで、その企業の価値が判断できるわけではない。
事業計画は非常に重要
最初から要領よくいくはずもありません。途中でうまくいかないと思ったら、ふりだしに戻ってやり直してみてください。何日かかろうとも、実際に事業を始めてしまってからやり直すよりは、ワークシートの上で試行錯誤するほうが、はるかにたやすい。
資本政策の重要性
資本政策の間違いは、初期の間違いほど、あとになってからの修正がきかない。
投資家を決める際に重要なこと
「良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み……死が二人を分かつまで」付き合えるかどうか。経営が苦しい時にこそ、一緒にやっていける相手なのかどうか。
ベンチャーにとって一番大切なこと
「アニマルスピリッツ」と、それを持ちあわせている「人」。(そして、それをサポートするマーケティングやシステム、科学技術といった企業の実体面をサポートする人達。その実態を支えるファイナンスにおける法律、会計、証券といった極めて多くの領域の専門家の協力)
起業のファイナンス ベンチャーにとって一番大切なこと
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