『ちびくろサンボ』、アフリカと無関係説

 
最近、友人に勧められて「脳内ワールド」というアプリに少しハマってます(こんな話から始めるとアフィ臭がハンパ無いんですが、特にアフィ的な意図も無いので、興味がある人はぜひとも検索してやってみてください。あえてリンクは貼りません)。

話の都合上、アプリの内容を簡単に説明すると、最初は、ひとつのワールド(みてくれは地球)と、100個の卵がある。ユーザーは、卵の数だけクイズに答える。クイズにはそれぞれ何らかのテーマ性がある。クイズに正解するとテーマに関連性のある生物なり無生物がワールド上に現れる。それを繰り返して、どんなワールドになるか(ちなみに私は「南米の秘境ワールド」とか「古代ロマンワールド」とかになったりしました。)、というアプリ。数年前に流行った脳内メーカーに近い、面白さだろうか。

その「脳内ワールド」のクイズの中に、次のような問題が出てきた。

「トラの生息しているのはどこでしょう?」
  1. アジア
  1. アフリカ
  1. オーストラリア 
問題文も選択肢も正確には違うかもしれないので悪しからず。正解はもちろん 1の「アジア」。

――トラはアジアにしかいない。



そんな流れで、ふと気付いた。

「トラって、『ちびくろサンボ』が出てきてなかったか?」





――トラはアジアにしかいない。

そもそもこの問いに「そりゃ出てくるだろ」という人に関してはいい。

ただ、『ちびくろサンボ』といえば、幼い頃に読んだこと、そして、それが世間的に物議をかもし、追いやられたこと、それが人種差別的な要素であったこと。それくらいなものだった。

そういった経緯で、『ちびくろサンボ』はアフリカの話の気がしていたのだが……。

――トラはアジアにしかいない。

もしかして、『ちびくろサンボ』はアフリカの話ではないのか?

というわけで、原文を読み返してみたくなった。以下、「探検コムHOME」というサイトの投稿「ちびくろサンボ(ちびくろさんぼ)」からの引用です。


 むかしむかしあるところに、ちびくろサンボという黒人の少年がいました。
 お母さんはマンボ、お父さんはジャンボという名前です。家族3人で、とても仲良く暮らしていました。

 ある日のこと、マンボママが、ちびくろサンボに赤い上着と青いズボンを作ってくれました。そして、ジャンボパパは、市場できれいな緑色のカサと紫色の靴を買ってきてくれました。靴は底も内側も真っ赤です。ちびくろサンボには、とてもお似合いです。

 うれしくなったちびくろサンボは、ジャングルに散歩に出かけました。すると、一匹の虎が向こうからやってくるではありませんか。
「ちびくろサンボ、お前を食ってやる!」
「お願い食べないで。この赤い上着をあげるから」
 ちびくろサンボがこう言うと、
「よかろう。今回はその赤い上着で勘弁してやろう」
 と、虎は上着を取り上げてしまいました。そして、
「おれはこのジャングルでいちばん偉いんだ」
 といいながら、ジャングルの奥に行ってしまいました。

 ちびくろサンボは、また歩き出しました。すると、向こうから、さっきの虎とは別の虎がやってきてこう言います。
「ちびくろサンボ、お前を食ってやる!」
「お願い食べないで。この青いズボンをあげるから」
 ちびくろサンボがこう言うと、
「よかろう。今回はその青いズボンで許してやろう」
 と、虎はズボンを取り上げ、
「おれはこのジャングルでいちばん偉いんだ」
 といいながら、ゆうゆうとジャングルの奥に行ってしまいました。

 ちびくろサンボは、ふたたび歩き出しました。すると、向こうから、なんとまた別の虎がやってくるではありませんか。
「ちびくろサンボ、お前を食ってやる!」
「お願い食べないで。この紫の靴をあげるから。ほら、底も中も赤いんだよ」
 ちびくろサンボがこう言うと、
「ふん、そんな靴、おれさまには何の役にも立たないぞ。お前と違って、おれさまは足が4本もあるんだから」
 サンボは必死に考えて、
「ならば、靴を耳に掛けてごらんよ」
 と言いました。すると、
「なるほど、それはいい考えだ。よかろう。今回はその紫の靴で見逃してやろう」
 と、虎は靴を取り上げると、やっぱり
「おれはこのジャングルでいちばん偉いんだ」
 といいながらジャングルに消えていきました。

 しばらく歩くと、4匹目の虎に出会ってしまいました。 
「ちびくろサンボ、お前を食ってやる!」
「お願い食べないで。この緑色のカサをあげるから」
 ちびくろサンボがこう言うと、
「カサなんてどうやってさしていけるんだ。おれは歩くときに4本の足すべてを使うんだ」
「しっぽの先に結んで歩けばいいじゃない」
「なるほど、それはいい。わかった。その緑の傘をよこせば、今回は食べないでやる」
 そして虎はカサを取り上げると、遠くに行ってしまいました。もちろん、
「おれはこのジャングルでいちばん偉いんだ」
 といいながら。

 かわいそうなちびくろサンボ。お気に入りの上着もズボンも靴もカサも取られ、泣きながら歩き出しました。 
 すると、突然、恐ろしい声が聞こえてきました。
「グルルー」
 声はだんだん大きくなってきます。
「大変だ、虎がぼくを食べに来る!」
 ちびくろサンボはあわてて近くの椰子の木に隠れ、そっと様子をうかがいます。 
「おれがいちばん偉いんだ」
「いや、おれだ」
 どうやら、あの4匹の虎が、誰がいちばん偉いのか、ケンカしているようです。そのうち、みんな本気で怒りだし、いっせいに飛び上がって取っ組み合いの大ゲンカを始めました。上着もズボンも靴もカサも放り出し、爪を立てたり牙でかんだりと、たいへんな騒ぎです。
 虎たちはぐるぐるともつれ合って、ちょうどちびくろサンボが隠れている椰子の木までやってきました。ちびくろサンボはさっと飛び出して、カサの陰に隠れます。
 ケンカはいっそうひどくなっていき、それぞれの虎が互いのしっぽにかみつき始めました。4匹の虎が、それぞれ前にいた虎のしっぽをかんだわけですから、椰子の木を中心にして、虎の輪ができあがりました。 
 ちびくろサンボは遠くに逃げて
「虎さんたち、上着もズボンも靴もカサもいらないの?」
 と大声で叫びました。けれども、虎はうなるだけです。
「いるのなら、いるといっておくれよ。でなきゃ、全部もっていっちゃうからね」
 こう叫んでも、虎たちのケンカはいっこうに収まりません。そこで、ちびくろサンボは落ちている上着とズボンと靴とカサを取り戻して、逃げ帰ってきました。
 虎たちのケンカはまったく収まりません。相手を食べてしまおうと、あいかわらずお互いのしっぽをかんだまま、木の回りをぐるぐると回るばかり。虎の輪はだんだんとスピードをあげていきました。輪の速さはぐんぐんと上がっていき、いまや、どれが足でどれが頭かさえ分からないほどです。それでも虎たちは早く早く走り続け、そのままとうとう溶けてしまいました。椰子の木の回りに、溶けた虎のバターができたのです!

 ちびくろサンボのジャンボパパが仕事から帰ってくるとき、ぐうぜん、このバターを見つけました。
「これは上等のバターだ。おみやげに持ってかえって、おいしい料理を作ってもらおう」
 ジャンボパパはこう言うと、持っていた大きな壺にバターをたっぷりと入れて、家に持ち帰りました。このバターにマンボママは大喜び。
「さぁ、晩御飯はホットケーキのごちそうよ」
 マンボママは、粉と卵とミルクと砂糖とバターをこねて、ホットケーキのもとを大量に作りました。それを虎のバターで焼いてみると、ケーキは黄色と茶色に焼き上がりました。まるで虎そっくりです。
 さぁ、晩御飯の時間です。3人はホットケーキをたっぷりと食べました。マンボママは27個、ジャンボパパは55個、そして、ちびくろサンボは、なんと169個も平らげてしまいました。 
 おなかがペコペコだったんですね。
以上、引用。

改めて読み返しての感想は、
食べ過ぎ。
初出以外でも「ちびくろサンボ」と言い過ぎ。
普通は2回目以降は「サンボは〜」とかになってもいい。
そもそも「サンボという少年がいました。みんなからは●●の理由から「ちびくろサンボ」と呼ばれていました」とかになるべき。
それでもまあ「ちびくろ」ってどうなのって気持ちはわからんでもない。
服とかの原色感がヤバイ。ここもたしかに少し差別的。
「靴は底も内側も真っ赤」が別の意味で、意味ありげ。本当は怖い、的な意味で。
「ちびくろサンボには、とてもお似合いです」←原文のニュアンスそのままなら気になる。
「おなかがペコペコだったんですね」ってのも、そう。トラがバターになるってセンセーショナル過ぎ。
 といったこともさておき。

気になったのは「ジャングル」と「椰子の木」。百歩譲って、「ジャングル」は森とかみたいなところをそう呼んでいる可能性もある。そのため、必ずしも「熱帯雨林」ではないだろう。が、それでもなお、熱帯地域(もっと言うと赤道付近)の人は「ジャングル」と言いがち。まあ、暑い地域なんでしょう、トラもバターになるくらいですから。

では「椰子の木」はどうか。以下の画像はココヤシの分布。



そう、これで「『ちびくろサンボ』アフリカの話」説が消える。

候補地は、インド、ネパール、ブータン、バングラデシュ、ミャンマー、タイ、ラオス、ベトナム、カンボジア、マレーシア、インドネシアになる。



もうpoliticallyにcorrectかどうかは一旦忘れて下さい。

――この辺、黒人いなくない?

そもそも『ちびくろサンボ』って誰が書いたんだよ。もうさ、指名ワード検索したら、ナレッジグラフが残酷にもほぼ答え言っちゃったよね。けど、続ける。一応wikipedia飛びました。

作者は、スコットランド人、ヘレン・バンナーマン(ヘレン・バナマン)さん。
イギリス陸軍の軍医だった夫に同行し、インド滞在中に自分の娘たちのために私家版として作ったのがThe Story of Little Black Sambo(『ちびくろさんぼのおはなし』)である。この絵本をはじめ、作品の多くの主人公が、添えられたイラストからも、南インド、もしくはタミルの子どもだと推測されるのはこのためである。(出典:ヘレン・バンナーマン - Wikipedia)
というわけで、結論。『ちびくろサンボ』はアフリカではなく、南インドの話だった。


世の中、たくさんの「確からしい嘘」と「嘘くさい真実」が人の認識のフィルターを通して数多く存在している。ググれば情報が出てくる現代社会において、「知らなかっただけだろ」とか(いや、ただ無知なだけだろ)いうことはもちろんあるだろうが、人には限界もあるし、個々人の関心の網をすり抜けて、思い込みや偏見が幾分か形成されてしまう。それが時には民族紛争やテロや戦争にも繋がったりするんだろう。

つい最近、他にもこんなことがあった。「機動戦士ガンダム」(リアルタイムでも見てないし、とりわけ好きでもないから3話くらいしか見てない) の中で、ギレンが演説をするのは、シャアの同級生のガルマが死んだ時のみで、そんな間抜けに死んだガルマに対してギレンが「あえて言おう、カスであると」と言ってると思っていた。そしたら、ギレン言ってないの、ガルマ死んだ後。ただ焚き付けてるだけ。なんだろうと思ったら、ギレンって2回演説してるのね。

そんなこと、本当多い。お互い、気をつけましょう。


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